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【緋色の欠片】ババ様と珠紀ちゃん、玉依姫についてのお話。

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・・・・・・私は、静かに目の前に座る人を見つめる。

 

宇賀谷静紀。私の、おばあちゃん。

 

おばあちゃんはこちらをちらりと見て、一度だけ優しく微笑むと

後はずっと静かに何かの古い本に目を落としていた。

 

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少し、緊張していた。

 

おばあちゃんは、記憶にあるよりずいぶん、痩せて

小さくなってしまったように思えた。

 

思い出の中にいるおばあちゃんはいつも優しくて、静かで

たくさんのおまじないや、昔話を教えてくれた人だった。

 

私が空想の友達と遊んできたと言うと、ちょっと笑って、

それは、ナントカさんだよ、とか

そういうことを言っていた気がする。

 

でも、目の前のこの人は、なんだか別人のように思えた。

表情は微笑んでいても、どこか厳しさを

持っていて、まるで何かに

耐えているような・・・・・・。

 

宇賀谷「・・・・・・久しぶりね。珠紀。

    父も母も、元気にしてる?」

 

珠紀「うん。元気に暮らしているよ」

 

それを聞くと、おばあちゃんは少しだけ

嬉しそうにうなずいた。

 

その姿はやっぱり、記憶にある通りのおばあちゃんだった。

ちょっと、安心できた。

 

挨拶もそこそこに、私は、先ほどあったことについて、

聞いてみようと思った。

 

自分が怖いめにあって、それなのに、その正体や原因が

何一つわからないのは、なんだかとても、しゃくだったから。

 

珠紀「ねえ、おばあちゃん。鬼崎拓磨って

   人が私を連れてきてくれて

   わからないことは全部、おばあちゃんに聞けって。

   だから・・・・・・」

 

いざ、口にしようとすると、なんだか現実味がなくて、

ちょっとためらう。

 

嘘だって笑われても仕方ない。

 

それを体験した私自身が、さっきの一連のできごとが

ほんとか嘘か、まだ判断しかねているくらいだから。

 

珠紀「ねえ。笑わないで聞いて欲しいんだけど。

   ほんとにあったことなの」

 

おばあちゃんは静かにうなずき、私の話の一部始終を聞いて、

それから、おもむろに口を開いて、信じられないことを言った。

 

宇賀谷「それは、知っていましたよ。結界がざわついていたし、

    それにオボレガミが騒いでいたのは、

    ここまで届きましたから」

 

絶対に笑われると思ってた私は、呆然として、

おばあちゃんを見た。

 

小さな頃から不思議な人だとは思っていたけど。

 

おばあちゃんは全てを見透かすような目で私を見つめ、

それから口を開く。

 

宇賀谷「カミ様が騒いでいるの。珠紀。わかる?

    今、この村には、

    カミ様の世界が近づいているのよ。

    そしてそれは、あなたにも関係のあることなの」

 

よくわからなくて、私はただ小さく首を振るしかなかった。

おばあちゃんは優しく笑って、それから話を続ける。

 

宇賀谷「八百万(やおよろず)のカミ、という

    言葉を聞いたことがある?」

 

私は黙って首を振る。

 

宇賀谷「すぐれたるとは尊きこと善きこと、

    功(いさお)しきことなどの、

    優れたるのみを云ふに非ず。

    悪しきもの怪しきものなども、  

    世にすぐれて可畏(おかし)きをば、神と言うなり」

 

おばあちゃんは突然そう言って、

きょとんとする私を見て少し笑った。

 

宇賀谷「ちょっと唐突だったからしら。世の中の不可思議な物事、

    これらをカミと言う、そんな意味の言葉よ。

    カミ様というのは、けして神聖な、

    よいものだけではないのよ。

    おそろしいもの、悪いもの、悲しいものの

    中にもカミはあるの。

    あなたを襲ったのは、オボレガミ。 

    やはりあの方々も、カミ様なの。

    今ではもう、まつられなくなって、 

    寂しくなって、誰でも自分たちの

    そばに連れて行こうとするのね」

 

先ほどまでのできごとが、鮮やかに脳裏に浮かぶ。

ゆらゆらと揺れる手。悲しげな一つ目。濃密な空気。

なんだか悪い夢でも見ていたような気がした。

 

その感覚は、今この部屋までも浸食して、私はひょっとしてまだ、

夢の続きを見ているのかもしれないと、そんなふうに思う。

 

珠紀「・・・・・・神、隠し。でもあれはまるで」

 

おばあちゃんは少し笑う。

 

宇賀谷「妖怪と?」

 

珠紀「うん。そんなふうに見えた」

 

宇賀谷「妖怪、妖、鬼、それらとカミは同じものよ。

    カミがまつり捨てられれば、そこには妖怪が生まれる。

    妖怪とカミは表裏一体のもの」

 

珠紀「でも、なんで、そんなものと私が関係してくるの?

   私、そんなの」

 

宇賀谷「この村に入る時、何かを感じなかった?」

 

・・・・・・感じた、なんて生易しいものじゃなかった。

あの激しい痛み。今でも生々しく思い出せた。

 

宇賀谷「あれはね、この村を代々封じてきた結界なの。

    あなたが玉依を継ぐ者だから、強く反応したのね」

 

玉依。またその言葉だ。それを聞くたびに、頭の隅が、変な具合に

うずいて、胸が痛くなる。

 

おばあちゃんは、じっと私を見た。

 

宇賀谷「何を封じる結界か。わかる?」

 

そんなこと、わかるはずがない、私はそう返そうとして、しかし、

私の口にはまったく別の言葉を紡いだ。

 

珠紀「鬼斬丸」

 

口にした途端、夢の中で見た風景が、強い感情の波と一緒に、

鮮明に浮かび上がってくる。

 

『封じられたのか』

『すまない』

『すまなかった』

『どう言って、詫びたらいい』

 

声にならない声。いつも夢の中で見て、起きると忘れる夢。

 

どんな夢を見たのかいつもわからずに

ただ悲しい気持ちだけを残していく。

あの夢。

 

宇賀谷「神代の昔より、私たちが守り続けてきたもの。

    最初のカミの化身。世界を滅ぼす力。

    私たちの血には、それを管理する者の血、

    玉依姫の血が流れているの。

    見えないものが見えるのは、その証拠ね。

    よく覚えてる。私も初めて異形の者を見た時は、   

    本当に怖かったもの」

 

おばあちゃんの言葉は、子守唄のように耳に響く。

知ってる。私は、この話を知ってる。

 

初めて聞く、とても現実味があるとは思えない話なのに、

私の体は確かにそれを受け入れようとしている。

 

宇賀谷「封印が、もう薄れているわ。カミはざわつき、

    人の世とカミの世は近しくなった。

    鬼斬丸は現の世に浮かばせてはいけないものなの」

 

泣きたくなるほど、胸が締めつけられる。

 

宇賀谷「カミの世と人の世。そのバランスが崩れてしまう。

    私たちがまつ理、封じている鬼斬丸は、

    それだけの力を持っているのよ」

 

夢の中で見た、静寂と闇が、脳裏に浮かぶ。

 

宇賀谷「あなたは、鬼斬丸を再び封印しなければならない。

    玉依の血を継ぐものとして。

    あなたをここに呼んだのは、そういうことなの」

 

おばあちゃんは静かに言った。

おばあちゃんの言うことはあまりにも唐突で、

脈絡がなくて現実とは思えなかった。

 

でも、それは確かに、本当のことなんだと思う。

 

珠紀「・・・・・・それは、危険なことなの?」

 

おばあちゃんは、私の心の中を見つめるようにしばらく黙って、

それから、小さくうなずく。

 

宇賀谷「そうね。失敗すれば、死んでしまうかもしれない」

 

死んでしまう。バカみたいに現実味のない言葉が、

頭の中に焼きつく。

 

私は、はいとも、いいえとも、言うことが出来ずにいた。

 

なんだか小説や映画みたいだなあ、という

気持ちの方が強かったし、それに。

 

頭の中にあのゼリー状の生き物や、

そのゆらゆらと揺れる手が思い出された。

 

そのイメージに、死という言葉が直結する。

 

あの感覚。連れて行かれると思った。

濃密な空気、どこかに誘うような不思議な匂い。

 

もう二度と、経験したくないと思った。

 

珠紀「・・・・・・いきなり、そんなこと言われても、わからないよ」

 

私はそれだけ言った。

おばあちゃんは、その言葉を予期していたかのように

優しくうなづいた。

 

宇賀谷「突然すぎたかもしれないわね。悪かったわ。本来なら、それは

    私の役目であったはずなのに。

    でも、それももうかなわないの。私が玉依の姫である

    期間は過ぎてしまったから」

 

おばあちゃんは寂しそうにそう言って。それから私を見た。

 

宇賀谷「時が来れば、あなたにもわかるはずよ。

    いずれ破滅は、必ず来るの。

    あなたの意志とは無関係に」

 

おばあちゃんはそう言って、それから、静かに目を閉じた。

 

それ以上、何も言葉を続けようとはしなかった。

おばあちゃんはとても疲れているように見えた。

 

頭の中が、いろいろなことがらでパンクしかけていた。

 

宇賀谷「今は、まだいいわ。今日はもう、疲れたでしょう。

    ゆっくりお休み」

 

おばあちゃんが最後にそう言ったのを合図に、

私はゆっくりとうなずいて部屋を後にした。

 

美鶴ちゃんは話が終わるまでずっと待っていてくれたらしく、

私が部屋を出ると、また静かに頭を垂れた。

 

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美鶴「お話は、終わりましたか?」

 

珠紀「・・・・・・うん」

 

なんだか複雑な気持ちでそう返す。

 

美鶴「お話が終わったら、珠紀様に、これをと。あらかじめ

   ババ様にことづかっていました」

 

そう言って、美鶴ちゃんが自分の手に、ふっ、と息を吹きかけた。

そこには、小さな生き物が現れていた。

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白い、狐のように見えた。大きさは、

手にすっぽりと収まるくらい。

 

尾は二つあって、機嫌よさそうに独立して動いていた。

 

美鶴「オサキ狐と呼ばれる妖の一種です。

   代々この家に仕え、主を守ってきました」

 

その小さい生き物はじっと私を見る。

その目には確かに頭のよさをうかがえるような

輝きがあった。

 

・・・・・・そんな生物は見たことがなかったし、

その現れ方だって普通じゃないし驚きもしたけれど、

それよりも何よりも。

 

珠紀「か、かわいい・・・・・・」

 

私が手を伸ばすと、すっと狐はそこに飛び乗って、小さく鳴いた。

 

???「ニー」

 

子猫のような鳴き声。

思わず、目元が緩む。少し心の重さが取れた気がする。

 

珠紀「このこ、飼っていいの?くれるの?」

 

美鶴「常にあなたのそばに仕え、あなたを守ります。

   それがこのこの役目」

 

美鶴ちゃんは少し寂しい目でその狐を見つめて、

それから、私を見る。

 

美鶴「転入手続きは、あらかじめすませてあるので、

   明日からは学校の方へ」

 

美鶴ちゃんはそう言って、私が使うことになっている

部屋に案内してくれた。

 

・・・・・・で、私の部屋なわけだけど。

なんで私の使うはずの部屋の、

私の使うはずの布団で、拓磨君が寝ているのかな?

 

美鶴「あ、あの。鬼崎さんも疲れていらっしゃるのではと。

   先ほどは、慣れない術式を打ったようですし」

 

美鶴ちゃんがもうしわけなさそうに言う。

 

美鶴「もともとは、鬼崎さんが昼寝をするのに

   使っていらっしゃった部屋なので」

 

・・・・・・いびきが、うるさいし。

 

珠紀「別に美鶴ちゃんが謝らなくてもいいのよ」

 

私はため息を付き、それから、部屋を見渡す。

和風の、落ち着いたいい部屋だと思う。

 

ここから新生活か。

 

そう思った。おばあちゃんの

言葉はまだ引っかかっていたけど。

 

でも今は、とにかく、そんなことは考えないでおこう。

 

『破滅はすぐに、訪れるのだから』

 

一瞬、他の人が言ったのかと思ってあたりを見回す。

 

拓磨は相変わらず、バカみたいに眠っていた。

なんだか自然に、笑みが浮かんだ。

 

私は部屋を出て、外に出た。

空は青かったし、あたりは静かだった。

 

日は静かにあたりを照らしていて、

世の中は何事もなく動いていて。

 

私は父や母が戻ってくるまでの、しばらくの間、

ここに滞在して、学校に通って。

 

ひょっとしたら、かっこいい男の子だって、

いるかもしれないし。

 

そんなふうに思って、それなのにどこかで、

そんなふうになるはずがないのだ、とも思っていた。

 

不意に足元にくすぐったい感覚があって、

オサキ狐がすりよっているのだと気づく。

 

珠紀「あなたにも、名前をつけてあげなくちゃね」

 

そんなことを呟きながら。

 

心の中のどこかで私は、自分が日常とは別の世界に

足を踏み入れたことに感づいていた。

 

どういうわけか少し、悲しい気持ちがした。

私の意志とは関係なく、私の世界はもう

動き出したのだと、わかっていた。

 

あのゼリーみたいな生き物。

おばあちゃんがオボレガミと言っていた

生き物の悲しげな目が、不意に思い出された。

 

おばあちゃんの言葉はたぶん本当なのだろうと、

私の心の一部分は悟っている。

 

封じられたカミを巡って、様々な運命がいっせいに

動き出したことが、私にはわかった。

 

けれど、だからといって、理解したくはなかったし、

受け入れたくなかった。

 

大きな変動が起ころうとしていることを感じていて、

でも、出来ることならずっと

それから目を背けていたいと思っていた。

まとめ

今回は珠紀ちゃんとババ様の会話メインで

玉依姫についてのお話でした。

 

いきなり玉依姫だからと言われた

珠紀ちゃんの感情の動き方が

表現されていてこっちも辛くなりますね。

 

さて玉依姫としての宿命を背負った

珠紀ちゃん、これからどうなっていくのでしょうか。

 

次回もよろしくお願いします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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